第18回 成人儀礼の一つ「ハジチ」

ハジチ(針突き入れ墨)は本来、一人前の女になったことを示す成人儀礼の一つだとされていたといわれている。
ところが、明治のはじめごろまでは、7歳ころに最初のハジチを入れ、本格的な文様を入れたハジチは16歳に開始し、婚約直前に完成することになっていた(『沖縄の祭祀と信仰』平敷令治)という。

薩摩の侵攻以後、沖縄女性が薩摩につれてゆかれるのをさけるためハジチをするとか、入れ墨をした手が遭難しかけた船をささえたために難を逃れたという故事に由来してハジチの風習が生まれたという伝承がある。
またハジチをしないとあの世で浮かばれないという歌もあり、そのために死んだ幼児の手にも墨で文様を書いたという話も伝わっている。

いずれにしても、ハジチセーク(針突き職人、ハジチャーとも)とよばれる専門の女性があたったという。
泡盛で墨をすり、それを手の甲に模様を描いてから針に墨をつけ、上から縫い針を束ねて突くやり方と、針で突きながら模様をつくっていくやり方があったという。針で突く痛みをこらえるために、大豆を煎って黒砂糖でまぶしたものを食べたようだ。

1回のハジチにおよそ2時間ほど要したというが、その夜から3、4日ほどは熱が出て腫(は)れあがり、ずきずきと痛んだそうである。
このような沖縄女性のハジチの風習も、1899年に出された明治政府の禁止令によって表向きはなくなったとされている。がしかし、禁止令の出された以降も、取り締まりの眼をかすめてハジチをする者がいたようだ。

〔次回 5月30日|第19回 厄年(やくどし)〕

参考書籍:トートーメーQ&A スーコーとトートーメー 沖縄祝い事便利帳

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