第3回目 ユタの得意とする分野〈バン〉

ユタには、それぞれに得意とする分野がある。それを「バン」と称している。
先祖にかかわることを得意とし、専門にするユタのことを「グソーバン」といい、イーフェー(位牌)祭祀にかかわることを得意とし、ハンジ(判示)を出すユタのことを「グヮンスバン」とよぶ。
さらには、ユタ社会独得の時代区分に対するバンも存在する。「イマメー」(現代)、「ナカヌユー」(王朝時代全般)、「ウサチユー」(神代、原始)を得意とするユタも存在する。

ユタは一般人が驚愕するほどの記憶力を武器に知識を深め、生来そなわった霊力を駆使し、巧みな話術をあやつって依頼者の求めに応じているワケだ。
一度接触した依頼者の氏素性はもとより、話した内容までも鮮明に記憶しているというから不思議な能力といえよう。
それだから、依頼者の求めに応じて、必要な場合はナカヌユー、ウサチユーまでさかのぼって祖先の系譜の詳細を語って聞かせたりする。
言うまでもないことだが、依頼者がユタの話す内容の真偽を確かめる方法はない。

ユタの口から語られる創世神話や王朝絵巻物語がいかに奇想天外な内容であっても、依頼者はその語り口調に眩惑され、ユタワールドの世界に没入していくことになる。

〔次回 10月3日|第4回 看板もなく宣伝もしないユタ稼業〕

参考書籍:

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