シラシと祖先供養

予測不能の災難、突然の病気、身内に死者がつづいた場合、あるいは動物などの家の中への迷い込み等々、こうした現象は沖縄ではカミや祖霊などからのメッセージだと受け取る考え方がある。
俗に言うところの人智のおよばない不条理な出来事に対しては、カミや祖霊、あるいは悪霊などからの生きている者への警告、つまり「シラシ」(知らせ)だというのである。

このような考え方を迷信だと一笑に付す人も多いが、その一方では、かたくなにそれを信じている人も負けず劣らず多い。
カミ、祖霊、悪霊のうち、今日なお沖縄の人びとの日常生活と深くかかわっているのが祖霊、すなわち今は亡き祖先の霊である。

ウグヮンブスク」(御願不足)がある場合、あるいは「祖先祭祀が正しく行われていない」状態のときには、子孫の病気や突発的な災難、動物などの家への侵入などによって注意を喚起し、「シラシ」をもって警告を発するのだとされている。
警告を受けた家族は当然、原因をつきとめ、祖霊が何を望んでいるかをさぐり、霊を慰め、怒りを鎮めるよう努めることになる。
そこで、カミや祖霊と直に交流する能力を有するとされるユタの存在そのものが沖縄人の独得の祖霊観に影響を与え、祖先祭祀に重要な役割を果たすことにつながるわけだ。

結局のところ、今現在、直接的にはユタとのかかわりを持たない人でも、伝統的な祖先祭祀を通して、その意思とはかかわりなくユタの存在とかかわっていくことになる。

〔次回 10月10日|ユタと死者への儀礼〕

参考書籍:琉球風水 福を招く家づくり墓づくり

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