第47回 ヒージャー汁

家づくりが共同作業でおこなうのが当り前であったころ、親戚縁者はもちろんのこと、近隣の人たちも手伝いにはせ参じた。
そして、いよいよ家が完成したとなれば、それを祝う「シースビーユーエー」は盛大な祝宴がはられた。
祝宴の籍には、歌・三線がつきものであったように、ごちそうとして「ヒージャー汁」をふるまうのも家主の務めとされていた。

ヒージャー(山羊)の料理としては、肉と骨を使った「汁」と内蔵の「煮込み」が定番であった。独得の・くさみ・があり、嫌いだという人もいるが、現在でも行事食の一つとして「ヒージャー汁」はかかせないものとなっている。

すぐれた養生の書としても知られる『御膳本草』(渡嘉敷通寛)の中に、「山羊は身体を補い、精神を強くし、産婦がこれを食べると大変よい。体のふらつく人、男子のつかれ、子どものてんかんをなおす。健胃の効」があると出ている。
また、年中行事の一つでもある「シマクサラシ」(悪疫祓いの行事)のさいには、牛・豚とともに山羊を用いる地域もあった。
このように、山羊もシマクサラシなどの儀礼に用いられることはあったが、豚肉が冠婚葬祭の儀礼の食品であったのに対し、庶民の滋養強壮食品として珍重されてきたようだ。

〔次回 12月19日|第48回 ユンヂチ〕

参考書籍:トートーメーQ&A スーコーとトートーメー 沖縄祝い事便利帳

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