古来より沖縄には道のつき当たるところはよくないところとされてきた。
「ヤナカジ・シタナカジ」と表現される悪鬼や悪霊、妖怪どもは、道を直進して、そのつき当たるところにたむろすると考えられてきたのである。行き場を失ったこれらの悪い気がただよいよどむところは、当然のことよくないところとされてきたわけだ。
このような場所は「ヤナカジゲーシ」(悪風返し)をする必要があるとされてきた。そのヤナカジゲーシの役目を果たしたのが、当初は文字のない自然石であった。その名残りをとどめているのが「文字のない石敢當」というわけである。 こうした文字のない石敢當が今なお健在なのが本部町の備瀬集落である。
集落にむかう道で、「カミミチ」(神事の際に神人たちが通る道)につき当たるところや交わるところには、自然石を立てて魔よけとしたという。その多くは集落の人たちが共同で造立し、旧暦の6月には豊作を祈願したという。
ただ残念なことに、いつの間にか祈願することもなくなり、これらの文字のない石敢當も、道路拡張や宅地造成などで撤去され、年々少なくなってきた。
〔次回 2月20日|いっぷう変わった石敢當〕
おもしろ石敢當 その5 文字のない石敢當
参考書籍:沖縄の魔よけとまじない
カテゴリー: 石敢當とシーサー
タグ: カミミチ, ヤナカジゲーシ, ヤナカジ・シタナカジ
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