第4回目 看板もなく宣伝もしないユタ稼業

稼業であることから、ユタグトゥも紛れもなく商売である。ところが看板一つあるわけでもなく、誘客のための宣伝文句一つもかかげるわけでもない。

ユタはいろいろな理由から、常に世間の厳しい批判にさらされてきた。そればかりではなく、時の為政者の弾圧を受けてきた歴史がある。
そのことが今日でもなお、看板も出さない、宣伝もしないというユタの姿勢にあらわれているのだろう。
そのことはまた、ユタコーヤー(依頼者)の心理に大きな影響を与えているようだ。

ユタコーヤーも「ユタ買い」(ユタに判示を依頼する行為)をおおっぴらにすることはしない。
多くの場合、隣近所の目を気にしてユタ買いを内密にし、それのためにわざわざ遠隔地のユタヌヤーに出かける。
もちろん、時間も費用も嵩むことになるのだが、あえてその労は惜しまない。
家庭内のトラブルを衆目に晒したくないという思惑が働くのだろうが、その表向きの理由のほかに、ユタ買いそのものに何かしらうしろめたいという感情があるのだろう。

ユタにしてもユタコーヤーにしても、自分たちの行為そのものを世間の目から隠しておきたいという心理が大きく作用しているのであろう。

それでもなお、沖縄社会からユタがなくなることはない。

〔次回 10月10日|第5回 アカシとハンジ〕

参考書籍:

カテゴリー: ユタグトゥ(ユタ稼業) |

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