四つのルール

サワリ(障り)のない「トートーメー(位牌)の継承」を実現するために考え出されたのが「四つのルール」である。
その一つが「嫡男(ちゃくなん)による継承」だ。

トートーメーは代々長男によって継承されるのが理想とされている。だから、仏ダンに安置されている位牌立てには、代々長男夫婦のみがまつられているのが、もっともよいトートーメーとされているわけだ。
したがって、いかなる理由があっても、長男をさしおいて二男・三男がトートーメーを継承するのはタブー(チャッチウシクミとして)とされてきた。しかも、その場合の長男は嫡子(ちゃくし)、つまり正妻の子という条件が付けられており、愛人や二号さんなどとよばれる妾の子は対象とはならないとされている。

とは言っても、理想通りにならないのもまた世の常で、長男が継承できないとさまざまなケースが出てきて、人びとの頭を悩ませているのである。
長男が継承できないケースとして単純な事例で考えてみると、

(1) 長男がいない
(2) 長男が未婚のまま亡くなった
(3) 長男が本土や外国で暮らしている

などがあげられる。

(1) のケースでは、男系血筋から養子をもとめ、継承者とする。
(2) のケースでは二男・三男が継承者となるが、次の世代で長男継承にもどす。
(3) のケースではトートーメー継承のために郷里にもどる。

以上、極めてシンプルな事例をとりあげたが、現実にはもっと複雑でさまざまな要因がからみ合って、解決に至るまで予想以上のエネルギーを使う。最悪の場合、親族同士の争いにまで発展してしまうことがある。

トートーメーを継承するということは、ただ単に仏ダンに安置された位牌を引き継ぐというだけでなく、それにまつわる仏事のいっさいを引き受けることを意味し、責任を持って後代に引き継ぐ責務を負うことにもなるわけだ。
当然、精神的・物質的な負担もいっしょに背負うことになる。それに加えて財産問題も密接にからんでくる。
それだから、理想通りにトートーメーが継承される場合は別にして、それができなくなったときに、その解決方法をめぐって争いが起こることになる。

トートーメーをめぐるトラブルが家族だけでなく、一族をまき込んだ大騒動にまで発展するケースが珍しくないのは、現実を無視した「四つのルール」にしばられ、タブーを犯したときの恐怖心が今なお沖縄人の心にしみついているからにほかならない。

参考書籍:家庭でつくる 沖縄行事料理とふるまい料理 トートーメーQ&A スーコーとトートーメー 絵でみる 御願365日

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