安須森散策 その2 拝所点描

安須盛り入口に左右が遂になるように設けられた拝所を分けて、目前の急峻な傾斜をよじのぼるようにすすみ、頂部にむかう。四連の岩山の南端に位置するのが、地元でシノクセとよばれる宜野久瀬嶽である。

急峻な斜面をよじのぼるように歩をすすめると、幹と幹をつないだロープが頂部にむかって延びているのが見えてくる。参詣者の道標の役目を果たしているわけだ。
ロープをたぐり寄せるように、不安定な足元を確かめるようにすすむと、林立した樹木がまばらになり、頭上をおおっていた緑の天井をつき抜け、陽光のふりそそぐ大岩の袂に立つ。岩山には「阿摩美久」と刻印された石碑がおかれている。祠や香炉もない。参詣者が拝むのであろう、かたわらには線香の束がうちすてられている。

石碑の立つ大岩を左手に回り込むようにしてロープ道はさらに頂部にむかって延びている。再び林立する木立を分けてすすむとやがて岩肌が目につく風景にかわり、いよいよ岩山が姿をあらわす。そして、縦横に亀裂の走る巨岩が折り重なり、冷厳な雰囲気に包まれた頂部ふきんに至る。

頂部直下の巨岩に左右が対になったような洞くつがある。岩陰をくりぬいたような岩窟を思わせる洞は高さ1メートル、奥行き3メートルほどあり、形状もほぼ似ており、女性の両の乳房を彷彿とさせる。
ここが『琉球国由来記』にいう「宜野久瀬嶽」であり、神名は「カネソ御代」である。地元に伝わる黄金伝説の由来ともなった洞くつであり、別名「黄金洞」(フガニガマ)ともよばれている聖地の一つである。

〔次回 8月15日|安須森散策 その3 聖地アフリ〕

参考書籍:沖縄の拝所 沖縄の聖地

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