沖縄ほど魔よけの文化を発達させた地域は、日本全国さがしてもない。
古くから沖縄の人たちは目に見えない魔の力を極度に怖れてきた。魔の力は人間が考えている以上に強大で、そのうえ実にたくみに人間社会にとけ込み、いつ、なんどき自分たちの生活の中に入り込んでくるのか、まったく予測がつかないと考えているのだ。
それだから、魔の侵入を防ぐために、二重にも三重にも手だてを講じてきた。
それでは「魔」の正体とはいったい何だろう。
「目に見えないのだから、だれにもわからない」というのが正直な答えだ。それだけになお恐怖心は強くなるということになる。
沖縄には「ヤナカジ・シタナカジ」(直訳=悪風・よごれた風)とよばれる「悪鬼悪霊」が存在すると信じられている。
このような「ヤナカジ・シタナカジ」がひとたび屋敷内に入り込むと、家屋敷は荒れ、そこに住む家族の健康がそこなわれ、家庭生活はたちまちのうちに破壊されてしまう、とされている。その「ヤナカジ・シタナカジ」こそ魔の正体だとされているのである。
こうした魔の侵入を防ぐために「魔よけの文化」が発達し、さまざまな魔よけの呪具(グッズとよんでもよいだろう)が考案されたってわけだ。
その代表格が沖縄を象徴するモチーフとして使われている「屋根獅子」である。屋根獅子は屋根を飾る装飾品ではなく、れっきとした魔よけの一つである。
今でも、沖縄中いたるところで見られる「石敢當」は、道のつき当りでたむろするとされる悪鬼悪霊の侵入を防ぐための魔よけの一つである。
よく気をつけてみると、門柱や屋敷の四隅にまじないらしき文言を墨書きした短冊型の板をはりつけている家がある。それもまた、家の中に魔が入り込むのを防ぐための魔よけである。本土では見られなくなった「フーフダ」とよばれる木の札だ。
また、門や屋根囲いのブロック塀の上に貝のおかれた家もときおり見かけられる。貝は「アジケー」とよばれるシャコ貝やスイジ貝だが、やはり魔よけの呪具の一つとして用いられている。
さらに、門をくぐると、一見して目かくしのようにも見える「遮へい垣」を設けいている家がある。「ヒンプン」とよばれ、直進する魔が家の中に入り込むのを防ぐとされている。家の中には、棟木に打ちつける「紫微鑾駕」という棟札がある。「シビランガ」と読むのだが、やはり悪鬼悪霊が家によりつかないようにするための魔よけである。
そのほかにも、魔をとりのぞいたり、その侵入を防ぐ呪具としては「サン」があり、ヒジャイナーとよばれる「しめ縄」がある。赤ちゃんを魔から守るための「マブヤーウー」・「刃もの」なども呪具として使われる。
参考書籍:沖縄の魔よけとまじない
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