シーミー
現在、最大の墓前祭といえば、草木がすっかり芽吹き、晴天の続く日中は夏を思わせるような暑さになる清明の節入りから2~3週間の間に営まれる「シーミー」であろう。 墓前祭とは、墓まで出向いて供物を献じ、祖霊を偲び供養すること。 近世(1609年以降)に入り、中国から「清明祭」が伝えられると、士族層がそれを受け入れ、一門の行事とするようになる。 明治の廃藩置県によって沖縄県が設置(1879年)され、身分制度がなくなると、士族の風俗・習慣が一般の人びとの間にも広まるようになり、清明祭も沖縄全島域で営まれる … 続きを読む
サングヮッチャー(3月3日、浜下り)
かつては集落の人びとが決められた日に浜辺に集い、持ち寄ったごちそうを食べて潮干狩りをし、手足を潮にぬらすことによって不浄を洗い、健康を祈願するということが行事の主体であった。 集落単位の行事は衰退し、家族単位でおこなうピクニック的な要素が強くなり、この日に潮干狩りを楽しむ家族の姿が多く見られるようになった。 家庭では、よもぎ入りの草もちをつくり、火の神や仏だん(祖霊)に供えて健康願いをする。一昔前までは、女の子にはよもぎ入りの草もちやサングヮッチグヮーシ(三月菓子)、花イカなどを詰めた色鮮やかな … 続きを読む
参考書籍:家庭でつくる 沖縄行事料理とふるまい料理 沖縄祝い事便利帳 絵でみる 御願365日
屋敷の御願 その2
拝むところと順序も地域的な偏差が見られ一様ではないが、一般的な事例を紹介する。 まず、「ヒヌカン」の拝みから始める。屋敷の御願を行う旨を告げ、とどこおりなく御願をさせていただくようお願いする。ついで、祖霊に祈願する。(祖霊への拝みのない地域が多い) それが終わると「ユシンヌカミ」への祈願となる。ユシンヌカミは北(ニヌファ)を起点として反時計回りとするのがもっとも多く、ついで東(ウヌファ)を起点とする地域がつづく。 いずれの回り方でもよいわけで、地域に伝わっている方法で行うのがよいだろう。 ユシ … 続きを読む
屋敷の御願 その1
春の彼岸入り(今年は3月17日から一週間)を告げると、定例の「屋敷の御願」が始まる。 火の神・トートーメー(祖霊)をはじめ、家・屋敷を守護する神々に供物を献じ、その加護に感謝の祈りを捧げ、ナンジャヤシチ・クガニヤシチ(銀の屋敷・黄金の屋敷)にしてくださるように願う。あわせて、家族の健康と子孫繁栄を祈願する行事である。 地域によって年1回~3回(5回の地域も)と執り行う回数は異なるものの、全島的に見られる御願行事の一つだ。 基本的には、酒・洗い米・花米・ウチャヌク(祖霊以外は三飾り)、果物の盛り合 … 続きを読む
此岸(しがん)と彼岸(ひがん) その2
沖縄では、死後の世界、いわゆる来世を「グソー」とよび、今を生きる世界、いわゆる現世を「イチミ」と呼称している。 人の死はイチミの川岸からむこう岸のグソーの世界へ渡ることを意味するとも考えられよう。 彼岸祭は、火の神・祖霊に供物を献じ、ウチカビを焚きあげて祖先の霊をしのびなぐさめる祖先祭祀の一つとして営まれているが、これまでの家族の加護に対する感謝の祈りをささげると同時に、家の安泰を祈願するのも行事の本旨となっているようだ。 春・彼岸の頃に咲くのが「彼岸ざくら」で、秋の彼岸のころに咲くのが「彼岸花 … 続きを読む
此岸(しがん)と彼岸(ひがん) その1
春分の日(旧暦の3月21日前後)と秋分の日(同9月23日前後)を中日として3日前を「彼岸入り」、3日後を「彼岸明け」といい、その間の7日間に営まれる祖先祭祀が「春の彼岸」と「秋の彼岸」である。 本土より流入した彼岸祭りでは、お墓参りをして墓前祭として営まれていたのだが、いつの間にか家庭内の行事のみと変質したようだ。 彼岸とは、仏教からきたことばの一つで、現世での煩わしいことや悩みごと(煩悩)ら解放されて自由(解脱)になり、明るく幸福な世界に至る(彼岸に到る)という意味である。 現世と来世との境界 … 続きを読む
参考書籍:家庭でつくる 沖縄行事料理とふるまい料理 沖縄祝い事便利帳 絵でみる 御願365日
ニングヮッチヒガン(春の彼岸)
春の彼岸である。春分の日をはさんで前後3日間の間に営まれる。 かってはお墓参りをして墓前で祖霊をしのび供養する墓前祭の一つとして営まれていたが、現在はもっぱら家庭内の行事ですませているようだ。もちろん、お墓回りの清掃をする姿は散見される。 火の神に供物を献じ、「彼岸祭を営む旨」を報告し、「家族の健康と家庭の円満」を祈願する。 ついで仏だんにも供物をそなえ、同じように「家族が健康で家庭が円満であるよう見守ってください」と祈り、「クヮッウマガヌチャー サカイハンジョウシミティ ウタビミソーリ ウート … 続きを読む
ニングヮッチウマチー(2月ウマチー)
四祭りと呼ばれる祭祀の一つで、旧暦2月15日に営まれる「麦穂祭り」のことである。 戦前は集落の神人たちが麦の穂3~7本を拝所に献じていたが、麦の栽培がなくなった現在ではこうした風習もなくなってしまった。 現在は、神人(地域によっては区長など)が花米とシルマシと呼称される未成熟の麦の穂でつくった酒(神酒)を持って集落内の拝所を巡拝し、人びとの健康と農作物の順調な成育を祈願している。 集落単位あるいは門中単位の行事として受け継がれ、家庭行事としてはすっかり衰退してしまった。 一部地域では今でも「シル … 続きを読む
参考書籍:家庭でつくる 沖縄行事料理とふるまい料理 沖縄祝い事便利帳 絵でみる 御願365日
シマクサラシ
シマクサラシあるいはシマクサラシーともいう。 ヤナカジ・シタナカジ(悪風・悪霊)、疫病などが集落や家内に入らぬように行われる行事。 行われる回数(複数回の地域も)や行事日は地域によって若干の差異があるが、おおむね旧暦2月の上旬ころに実施される。 神役(地域によって区長等)が御嶽に線香、花米、酒などをおそなえし、ヤナカジ・シタナカジが入り込まないように祈願する。その後、動物(牛や豚など)の肉をお汁にして食べるのが習わしとなっていた。 左縄(ヒジャイナー)に牛や豚の骨をくくりつけ、それを集落に通じる … 続きを読む