ユタになるまで
沖縄には人並み以上の霊力・霊感の持ち主だとみなが認める人たちがいる。世間一般では、そういう人たちを「サーダカンマリ」(性高生まれ)とよんでいる。 カミに近づき、その声を聞いたり感じたりする能力を、「セヂ」(シジとも)という。その能力の高い人を「セヂ高い」(シジタカサン)というのである。セヂはふつう霊力と解釈されている。 サーダカンマリの人は、その生来的な霊能力ゆえに、ふつうの人では決して経験できないような不思議な体験(超自然的な体験)をするといわれている。その不思議な体験をきっかけとして「カミダ … 続きを読む
参考書籍:琉球風水 福を招く家づくり墓づくり
ノロの役割とユタの役割 その2
一方が所得の保証された神女(ノロ)として組織化されていく中で、それとは逆に組織からはじき出され、共同体を司祭するという職務を失った神女(ユタ)は、人びとの日常の暮らしと密接にかかわることで活動の場を見出していく。 死の穢(けが)れを忌み嫌い、死者への儀礼や供養から身を引くようになったノロにかわって、積極的にこれからのこととかかわりを強め、個人的な求めに応じて呪術などもおこなうようになっていく。 こうしたことが、生来的に備わっていた霊的能力にいっそう磨きをかけることになった。そして、カミや祖先の霊 … 続きを読む
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ノロの役割とユタの役割
先回見たように、歴史をたどると、神女(ノロなど)とユタが明確に区別されていなかった時代があったことが分かる。それだから、神女とユタももとをただせば源は一つだったということも言えるワケだ。 ところが、神女が組織としてまとめられるのと軌を一にして、布達の系列に袂を分かつことになる。 一方は、役人と同様に王名で所得の保証された神女(ノロ、ツカサ等々)として共同体の祭りや行事を司る役目を担うことになる。王名で所得が保証されるわけだから、その役割は祭りや行事の司祭する神事に限定され、死者の埋葬や供養などと … 続きを読む
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ユタ発生の謎その3 ノロが先かユタが先か
沖縄人が集団で生活を営むようになったころ、その集団の祭祀を担ったとされる「根神」や「ノロ」などとよばれる神女とユタは深くかかわっていたと考えられている。 根神(ニーガン)とは、村落で行う祭りや行事などを司る神女である。とは言っても根神の司祭する村落の規模はごく限られたもので、後世のようなたくさんの戸数をかかえた共同体ではない。このような根神をたばねて指揮し、祭りを司ったのがノロである。いわば根神の発展した形がノロだともいえる。 小規模の村落において、根神やノロとよばれた神女が祭りを司る役割を担っ … 続きを読む
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ユタ発生の謎その2 ノロが先かユタが先か
ノロが先かユタが先かをさぐるためには、まず歴史をさかのぼらなければならない。 古代沖縄人が集団生活を営んでいた頃、その集団の祭祀を担っていたと考えられている「根神」(ニーガン)とのかかわりを明らかにしなければならないからだ。 根神とは、村落で行う祭りや行事などを司る神女のことである。とはいうものの、当初、根神の司祭する村落の規模は極めて限定的で、現在のような大規模の共同体ではなかった。 ところが共同体が大規模化してくると、祭りを司祭する神女(根神)も複数存在するようになる。 こうした複数の神女を … 続きを読む
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ユタ発生の謎その1
ふって湧いたように巻き起こり、知らず知らずのうちに沙汰止みになってしまうのが「ユタ論争」だ。 肯定派も否定派も、傍観しているだけの人も、こぞって「沖縄社会からユタはなくならない」という一点では意見は一致する。 この奇妙な現象は、今日でも変わらない。 困ったときの神頼み、当たるも八卦当たらぬも八卦程度の軽い気持ちならいざ知らず、ユタコーヤーの多くはもっと切実で深刻な問題をかかえているのがふつうである。 時として起こるユタコーヤーをも巻き込んだ騒動は、社会的関心をよび、大きな論争に発展するのだが、そ … 続きを読む
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ユタと死者への儀礼
人が亡くなると火葬に付して、葬式には僧侶を招いて読経をあげてもらうことは、今の沖縄ではごく当り前のこととなった。 しかし一昔前の沖縄、特に地方では葬式に僧侶を招くことはめったに見られないことであった。 人の死に寺の僧侶がかかわるようになったのは、歴史的に見ればごくごく最近のことだといえる。 古くは、死者の埋葬やその供養にかかわっていたのは、ノロを筆頭とする神人であった。 ところが尚真王代になってノロの制度化がすすむようになると、死の穢れを忌み嫌うようになったノロはもっぱら神事を担当するようになる … 続きを読む
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シラシと祖先供養
予測不能の災難、突然の病気、身内に死者がつづいた場合、あるいは動物などの家の中への迷い込み等々、こうした現象は沖縄ではカミや祖霊などからのメッセージだと受け取る考え方がある。 俗に言うところの人智のおよばない不条理な出来事に対しては、カミや祖霊、あるいは悪霊などからの生きている者への警告、つまり「シラシ」(知らせ)だというのである。 このような考え方を迷信だと一笑に付す人も多いが、その一方では、かたくなにそれを信じている人も負けず劣らず多い。 カミ、祖霊、悪霊のうち、今日なお沖縄の人びとの日常生 … 続きを読む
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好意的に見たユタ
要約して言えば、沖縄人の信仰生活の根幹をなす祖先祭りの隅々までユタ社会の考え方が反映されているのを素直に認める視点でユタを理解するということになる。 ユタ社会の考え方を単純に迷信、タワ言だと否定しては祖先祭りはできないということだ。 それはまた、祖先祭りを否定しては沖縄の信仰生活も成り立たないということにもつながるというものである。 前回の「憎悪の目で見たユタ」社会も、一つの実態をあらわしたものにはちがいないが、それとは相反する視点からユタを捉えようとする考え方もあるということを物語っている。 … 続きを読む
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ユタは本当に霊能者か!
ユタとは何者かと問われて、きちんと答えてくれる人が果たして存在しているのだろうか。 現に今、ユタ買いをしている人にこの質問をぶつけてみたところで、明確な返答が期待できるとは思えない。頭からユタの能力を否定し、嫌悪している人を別にすれば、一般の人びとにとってはユタというのは実に不可思議な存在だといえよう。 それで前回であげた「憎悪の目で見たユタ」と「好意的な目で見たユタ」の双方の視点から「ユタは真に霊能者」なのかを考えてみることにする。 ●憎悪の目で見たユタ 沖縄には「ユタムヌイー」ということばが … 続きを読む
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