ユタのハンジ その2

これまで考えたこともない遠い祖先のグソーでの暮らしぶりが、真実味をおびてユタの口から語られると、漠然としていた祖先にかかわる不都合が現実味をおびてくる。
ユタの思うツボってところだ。まんまとユタの術中にはまることになる。そのことは当事者のみならず、席を同じくしている他の依頼者にも同じ効果があるようだ。
半信半疑であったグソーの世界の存在が、目の前の現実の世界と同じように確かなものだと思えてくる。

もちろん、グソーの世界の存在を完全に否定するのであれば、祖先供養も意味を失ってしまうし、死者を弔う際のさまざまな儀式も無意味なものになってしまう。そうであれば「ユタグトゥ」そのものが成り立たないということになる。

祖先にまつわる不都合の大部分は「イーフェー祭祀」にかかわることである。
もう一つ、ユタがよく口にするハンジの一つに「チヂウリ」というのがある。
チヂウリとは、祖先のおこなった善行や悪行、吉凶(めでたいことやわざわい)が、世代を超えて子孫に再びあらわれることをいう。
チヂウリの典型とされるのが、祖先が酒呑みであった場合、子孫も酒飲みとなり失敗を繰り返すというものだ。当然、ここでいう酒呑みというのは単にサキジョウグ(酒好き)というだけでなく、それが原因で人生上の失敗を重ねると言う意味だ。酒乱故に仕事につまずいたり、家庭内の不和を引き起こすというものだ。
こうした悪癖は遺伝的な問題ではなく「チヂウリ」だというのである。 

チヂウリによって子孫が不運に見舞われるのは、祖先に対する供養に「フスク」(不足)があるからだとするのが、ユタの一致した見方でもある。従って、チヂウリから回復するためには、フスクを解消することが先決だということになる。

〔次回 3月19日|フスクの解消とチヂウリの回復〕

参考書籍:

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