ユタとトートーメー

死者の魂を位牌によって祀るという位牌祭祀が沖縄社会に受容されて以来、それまでの信仰生活の中核を成していた「ヒヌカン信仰」を圧倒し、トートーメー信仰が信仰生活はもとより年中行事においても最重要な位置を占めるようになった。

一般的にトートーメーとも呼称される「位牌」(イーフェー)は、家の宝物とされ、今次大戦中でも命をかけて守り通したという人も少なくない。 こうした考え方は今も変わらず、不幸にも火事などで家が焼け落ちても、トートーメーさえ無事に持ち出せば、必ず家の再建ができると信じられている。
亡くなった祖先の霊が宿り、祖先祭祀の中心となっているトートーメーだが、そのまつりごとに関しては、古くから伝えられているルール(約束ごと)やタブー(してはいけないこと)が慣習としてそのまま受け継がれている。

ルールを守り、タブーを犯さないために、当該の家族だけでなく、時によっては一門を巻き込んでの騒動となり、社会問題化することもしばしば起こっている。そのたびにユタの存在が大きくクローズアップされる。 「トートーメー問題の裏にはユタがいる」という批判的な論調がマスコミをはじめとして世論として巻き起こるのは、このような事情があるからといえよう。

ルールやタブーにユタ社会の考え方が色濃く反映されており、ユタとのかかわりがとても強いといえるのも事実である。 トートーメーをめぐるトラブルの元凶としてユタの存在をあげ、ユタとのかかわりを断ち切ろうという声は、たびたびあがるのだが、その多くはかけ声だおれで目で見えるほどの成果はあがっていない。

〔次回 4月2日|トートーメー問題の発生〕

参考書籍:

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